実家を売却した話

in #japanese6 years ago (edited)

私の実家は私の住む島田市から一時間程大井川を遡った川根本町。川根茶の産地にあります。
IMG_20170920_132506.jpg

母が亡くなってからは住む人もなく空き家になっていましたが、所有者である兄は、誰がいつ行っても困らないように、電気・ガス・水道は使えるようにしてくれていました。

兄が折に触れ植木や生垣の手入れに来てくれていましたが、鎌倉に住む兄にとってもそれはかなり負担になっているだろうと、姉弟も心配していました。

実家は明治二年に建てられたもので、築百五十年。歴史を刻んで来ました。

先祖が自分の山から切り出し、三年寝かせた木を使って建てたものだと子供の頃に父から聞かされたことがありました。

当時、田舎にはお役人が来た時に泊まる所がないので、宿にもなるようにと建てたのだそうです。

目をつむると、懐かしい家の様々な風景が浮かんできます。
父や母がいて、祖父母がいて、姉弟がいて、犬がいて…その中心にはやはり家がありました。

そして私の子供たちにとっても大好きな場所でしたので、思い出がたくさんあるだろうと思われます。

b_illust_98_0M.png

そんな思い出がたくさん詰まった実家でしたが、実際のところこれから先、どうしたものかと兄姉弟の悩みの種でした。

兄は

売れるものなら売りたいが、妹たちの思い入れのある家を売ってしまっていいものだろうか

と思っていたようでしたし、
姉と私と弟は

兄にばかり負担を掛けて申し訳ない。売れるものなら…

と思っていました。

売れてしまったら、もう自分達の実家ではなくなってしまい、それはとんでもなく寂しいことだけれど、

誰かが住んで、この家に風を通してくれたら、私の寿命よりははるかに長く生き続けてくれるだろうと思っていました。

住む人もなく朽ちていく家を想像するのはとても辛いことです。

b_simple_136_0M.png

そこで、手離すことも致し方ないという結論になり、不動産屋さんに頼んで買手を探してもらっていたのですが、条件が悪いため買ってくれる人はなかなか現れませんでした。

ところが夏前になって、欲しいと言ってくれる人が現れ、トントン拍子に話が進みました。

交渉には全て兄が当たったため、どんな人が買ってくれたのか知らなかったし、

「いよいよ人手に渡るのか…」と思うと、私はいささかショックもあり、知りたくないとも思っていたのですが、

しばらくすると、私の気持ちも落ち着き、聞いてみる気になりました。

兄が言うには

藤枝の五十代のご夫婦で、お二人ともバイク🏍️に乗るし、ツーリングを楽しむ人達のための宿を開きたいと思っているらしい

とのこと。

そのため、マイナスの要素になっていた

家が大きすぎる
並んで建っているお茶工場が不要

という二点が反対にプラスになり、すぐに話がまとまったのだそうです。

b_illust_81_0M.png

もう人手に渡ってしまったかつての実家は、典型的な『田の字型』の間取りでした。畳は京間。

玄関を入ると広い三和土(たたき)があり、障子を全部開けると西の庭からの風が家の中を吹き抜けていきました。 
 
奥の方の部屋は天井板が張られていましたが、手前の二間はむき出しになった梁が囲炉裏から上がる煙で燻され真っ黒でした。

私が幼い頃、囲炉裏は一畳の大きさで、そこで火を焚いていました。そんな暮らしが百年は続いていたのですから、真っ黒にもなるはずですね。

その煙が、長い年月家を白蟻から守ってくれていました。

母屋の他に私の祖父の隠居部屋として父が建てた離れがあり、お爺ちゃん子だった私は、よくその離れに遊びに行き、囲碁や習字を教えてもらいました。
IMG_20171006_142531.jpg

そんな思い出深い家はもう私の実家ではなくなってしまいましたが、新しい所有者の方がとても気に入って下さり、大事に使って下さるようなので本当に嬉しく思っています。

ご先祖様には申し訳ない事ですが、兄の負担も、私達の心配も解消するには売却しかなかったし、良い方の手に渡ったことで全て丸🙆だったと思っています。

空き家の増加は現代の社会問題となっていますが、人口減少、家族の形態の変化など解消できない面もあり、リノベーションなどで活用できる物件があっても、それはほんの一部でしかないでしょう。

画期的な解消法はあるのでしょうか?

私のルーツの実家を売却するという、空き家問題に直面した私でした。

#338

Posted using Partiko Android

Sort:  

とても良い方に住んでもらえることになり、これからも活かされて行くことになったようですね。
良かったですね、と思いつつも…。
ホッとしたようなさみしいような…@sumiさんの気持ちが本文から伝わって来て、しんみりしました。
私の実家もこれからどうなるのか…考えさせられる記事です。

私よりもずっと長くあの地に建っていて欲しいと思っていたので、正直嬉しいです。寂しさもあるけど安堵感の方が大きいですね。朽ちて行く姿は見たくなかったから。

Posted using Partiko Android

私は、両親が住んでいる実家がまだあります。
私が小さかった頃は、周りは畑ばかりでしたが、今では住宅街。
将来、実家がなくなることもあるんだよなぁと思いながら読ませていただきました。

いよいよこの家(婚家)しかないのだと覚悟をしましたよ😉

Posted using Partiko Android

ご実家問題。引き継いでくださる方がおいでになられて良かったですね。自分も実家を思うと、人様に…という思いと、このまま朽ち果てるのはの二つの狭間できっと悩むと思います。

Posted using Partiko iOS

誰にでもいずれ起こりうる問題と言えるかもしれませんね。寂しさもありますが、安堵感もあります。複雑ですね〜

Posted using Partiko Android

実家がなくなるのは寂しいですが、次の方が使ってくださるようで良かったですね^^
私も今後、実家問題は避けられませんね。

カヨコさんにとっても身近な問題なんですね。その時良い解決策が見つかるといいですね。

Posted using Partiko Android

うちは、父が60代前半で大病を患って、その時に父が 「いつまで生きられるか分からないから、家に縛られたくない。」という理由で、実家を売却しました。幸運にも直ぐに売れました。私も妹も結婚して家を出ているので、誰も実家を継ぐ人がいないというのもありました。
父は今ではすっかり元気で、賃貸マンションで暮らしています。あの当時は大変だったけど、体力のあるうちに決断して良かったと言っています。(^^)

そうでしたか。今の時代は既に家があって家族があるという形ではないので、家の継承は難しい問題ですね。我が家も他人事ではないようです。

Posted using Partiko Android

川根茶の川根ですね。素敵なおうちなんでしょうねぇ。
お互いの兄弟姉妹を思いやる@sumiさんのお人柄も何かホロリ。
私も父が亡くなった時に、父名義にしていた母の生家(全然大きくないです)は、もし崩れて人にけがでもさせたら大変と更地にして売却しました。
そして今回亡くなった母が姉一家の所に同居する時に、思い出はあるけれど置いておいても…って言ってた所で、親戚の一人が買い取りたいと申し出ました。その後は賃貸物件として他人に貸していたようですが、その方が出た後はいよいよ駐車場になったらしいと噂で聞き、姉が写真を撮り送ってくれましたが、何とも寂しい気持ちになったのを思い出しました。

実家がなくなってしまうのはホントに寂しい事ですね。でも、朽ちていくのは見たくなかったので、その点では感謝しています。

Posted using Partiko Android

Coin Marketplace

STEEM 0.29
TRX 0.12
JST 0.034
BTC 63521.22
ETH 3319.09
USDT 1.00
SBD 3.91