映画感想#3 ネタバレ/R18注意「愛のコリーダ」(1976) オススメ度7.9/10
1976年の大島渚監督作品です。R18の衝撃作品ですので、閲覧注意です!
昭和の衝撃事件を題材に日本初の本番行為を行ったハードコア・ポルノ映画
まず、100分ぐらいの映画の中で70分ぐらいの中で性行為が行われています。あらすじを全く知らずに見ていたので、途中まで、「え、これなんのAV?どう終わるの?」という感じでした。
題材は第二次世界大戦前の1936年に起こった阿部定事件です。性交中に女性が愛人男性を扼殺し、局部を切り取りました。軍国主義と右翼テロが世の中を支配していく重苦しさが日常を覆う中で起こった衝撃の事件でした。
大島渚監督はリアルにこだわりました。演技ではなくどうしても本番行為を撮りたいという想いから、規制があった日本映画としてではなく、フランスとの合同制作映画という形をとりました。オーディションでは女優の性器をチェックしました。
日本での公開時は当初大幅な内容カットと修正が加えられ、猥褻物にあたるという理由で裁判にもかけられたそうです。
「コリーダ」とはスペイン語で「闘牛」という意味。必ず最後は殺されなければならない
本場スペインの「闘牛」では、必ず最後に牛が殺されます。「愛のコリーダ」では、男を独占したいという欲望が極限に達したが故に男を殺す定の様子が描かれています。
実物の阿部定は法廷で以下のように証言しています。
「私はあの人が好きでたまらず、自分で独占したいと思いつめた末、あの人は私と夫婦でないから、あの人が生きていれば、ほかの女に触れることになるでしょう。殺してしまえば、ほかの女が指一本触れなくなりますから、殺してしまったのです」
「それは一番可愛い大事なものだから、そのままにして置けば、湯棺でもする時、お内儀さんが触るに違いがないから、誰にも触らせたくないのと、どうせ石田の死骸をそこに置いて逃げなければなりませぬが、石田のオチンチンがあれば、石田と一緒の様な気がして淋しくないと思ったからです。」
阿部定は釈放されたのち、1969年公開の東映映画『明治大正昭和 猟奇女犯罪史』に特別出演しています。
渡辺淳一の「失楽園(1995)」もこの事件をモデルにし、黒木瞳演じた「SADA」もこの事件を題材にされています。
それぞれの演者のその後
監督の大島渚監督は、1983年に「戦場のメリークリスマス」1999年に「御法度」などの代表作を残し、闘病生活を経て2013年になくなりました。
藤竜也はこの作品ののち2年間は俳優活動から遠ざかりましたが、その後復活。今も映画やドラマに出演しています。
女優の松田 暎子は、その後数本の映画に出演のち、1982年のフランス映画を最後に引退。
映画での本番行為というタブーをこの時代に撮る心情はどのようなものだったのでしょうか?
少なからずその後の人生にも大きく影響を与えた映画であることは間違いないと思います。
自分に依存する定の為にならなんでもしてやるという吉藏の想いと、それにすがって生きざるを得ない定の生き様が切なく描かれていて、記憶に残る映画でした。