AYUMI HAYASHI WORKS20180404

はな

彼はいつもの場所に腰掛ける
彼女に手を伸ばし
優しく彼女の柔らかな髪に触れながら
頭を撫でた彼女の首はだらりと落ちた彼はいつの間にか枯れ果てて
ひとり、逝ってしまった
彼女に気付けなかった彼女はいつものソファに座り
いつもの本を開き、ただそこに居た彼は心音を失った彼女を
庭に埋め、椿を育てはじめた彼の日課は椿を愛でるコトとなった無言の時間
誰の邪魔も入らないある年の冬
彼は椿の隣に穴を掘った
その穴に横たわった彼は
静かに彼女の元へと旅立った誰も居なくなった家の
小さな庭にはひっそりと
椿が今年も花をさかせる
彼女と同じように
あっさりとその首を落としては
咲き続けている

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